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(暑っちー…) 朝も早い時間から、太陽が照り付けている。 まだ梅雨はあけていない筈なのに。 (まぁ、もう7月も近いしな…。夏がそこまで来てるって事か) 手を翳しながら空を見上げた陽介は、眩しさに目を眇めつつ、そんな事を思う。 視線を通学路へ戻すと、前方で、太陽の光をキラリと反射しているものが視界に入った。 普段はクールグレイの髪が、陽光に照らされて、いつもより柔らかそうに見える。 (…触り心地、良かったよな…。サラサラで癖が無くて…気持ちいい) 染めている訳ではなく、生まれつきなのだという銀の髪に触れた時の事を思い返しながら、陽介は一気に前を歩く銀髪の人物との距離を詰めた。 「よう、神生! おはよーさん。今日は暑ィな」 ポンと軽く背を叩いて呼びかけると、そのまま隣に並んで、同じ歩調で歩き出す。 ……と。 「ん、おはよう。…“陽介”」 ふわりと笑って。挨拶が返された。 ただ、それだけ、なのに。 「…ヤバイ…」 ピタッ、と陽介の足が止まる。 「…? 陽介?」 急に足を止めた陽介の顔を怪訝そうに覗き込むと、陽介は片手で口元を隠すように覆っていて。 「いや…、はは。その、なんつーの、…思い出しちまったっていうか」 「…何を?」 首を傾げる神生は、自分で気付いていないらしい。 言わす気か、と赤くなりながら陽介が小さい声で呟く。 「陽介」 重ねて名前を呼ばれて、うぅ、と陽介が唸る。 「だから、そのっ、……。」 仕方ねーな、と覚悟を決めた陽介は、声をひそめて、神生の耳元で告げた。 「…お前が俺のこと名前で呼んだのって…“あん時”が初めてだったろ」 「―――っ!」 陽介の言う“あん時”が、どの時か思い至って。 フイ、と陽介から視線を逸らすと、神生はスタスタと早足で歩き出した。 「ちょっ…!」 いきなり置いて行かれそうになった陽介は、慌てて神生に追いつく。 「おい、かみゅ…」 「スケベ。」 一刀両断。 スケベって、お前。 「いや、しょーがねーって。何せ健全な男子高校生ですから。思い出したら興奮すんのもやむをえな…おぉーい」 更に早足になる神生に追い縋って、陽介は小声で問いかける。 「じゃあお前は平気なのかよっ、“了”!」 「!」 ピタリ。 一瞬、動きが止まって。 神生はまた、直様歩き始めた。 けれど、背後からでも、耳が真っ赤に染まっているのが見てとれて。 自分が名前を呼んだことで神生が照れているのが分かった陽介は、上機嫌になる。 「了のスケベ。」 「う…るさい」 「でも、お前も思い出したんだろ?」 「……っ」 隣に並べば、目元も朱に色づいているのが見える。 それを“愛しい”と思ってしまえるのだから、やっぱりコイツにどうしようもなく参っていると思う。 「まぁ、名前で呼んだのは無意識だったんだろーけどさ。いや、嬉しーぜ? 嬉しいけど、すっげーヤバかったっていうか…」 「…だったら、呼ばない」 「は?」 「もう呼ばない。“陽介”とは呼ばない。花村も、了って呼ぶな!」 …声に怒気が含まれている。 そう言えば、短気な一面もあるんだった。 暑いせいで出た汗ではない、いわゆる冷や汗が一筋、頬をつたう。 「えーと、了?」 「呼ぶなって言った」 「……。」 (でも、いつもの了なら、こんくらいの軽口で怒らねーよな) つまりこれは、怒っているように見えて、実はめちゃくちゃ恥ずかしがってるだけなんじゃ、と思いついて、陽介は思わずニヤケてしまいそうになる。 けれど、そんな事をすれば今度こそ本気で怒らせかねないので、表情を引き締めた。 「ごめん」 「……。」 「俺に了って呼ばれんのは、もうゼッテー嫌?」 「…嫌…な、訳じゃ…。でも、花村があの時のこと思い出す、とか…変なこと言う、から…。俺も思い出すようになっちゃって、もう…呼ばれた時、普通にしてられない、だろ」 熱を逃がすように、ふぅ、と長く息を吐いて神生が答える。 それにすら、ゾクリと欲を促されそうになりながら、陽介は言葉を続けた。 「ワリ。けど、この先お前に呼んで貰えねーのも、呼べねーのも、どっちもシンドイし」 だからさ。 もう一度、神生の耳にしか届かないように声を落として。 「それならいっそ、名前で呼び合うのは2人きりの時だけにするってのは、どーよ?」 「―――……。…………2人きりで、それに確実に周りに誰もいない時。百歩譲って、それなら……いいけど」 視線は合わせないまま、神生は小さく頷いた。 「…それってなんか、ほんと“特別”って感じするよな」 零された嬉しそうな響きに、ついつられて顔を上げると。 へへっ、と照れたように笑っている陽介の顔が見えて、なんだか怒りも失せてしまった。 「……花村の、そういう、恥ずかしいことも真っ直ぐ言えるとこ、好きだけど……。場所は、考えて発言して欲しい」 「ぶはっ。…お前の発言も、相変わらずそーとー天然だけどな…」 「?」 「いや、俺もお前が好きだってこと」 「!?」 自分から好きだと言っておきながら、言われて気付いたとでも言うように改めて赤くなる神生を見て、陽介は幸せな気持ちになる。 「了」 「っ……」 耳に触れてしまいそうなほど近くで名前を呼ばれて、ビクリと肩が竦む。 「は、なむら…?」 「今日、放課後空いてるか?」 言外に仄めかされている熱さを感じ取りながら、それでも、 「…空いてる」 間を置かずに、神生は答えた。 今更取り繕っても、誤魔化しても、気持ちは1つしかない。 陽介と同じ想い、それ1つしか。 返事を聞いた陽介は、神生と肩を組むようにして抱き寄せ、銀髪をくしゃくしゃと撫でる。 こんな風にされる事も、陽介なら、嫌ではない。 「なんかもう、まだ学校に着いてもいねーのに放課後が待ち遠しいんだけど」 「…俺もだから。一緒に我慢するから」 「今にも迸りそうなこの情熱を我慢しろって、拷問だよな…」 「…花村…。わざとそういう言い回ししてる?」 「冗談でも言って気ぃまぎらわさねーと、放課後まで保たねーんだって」 「……。昼休みに、キスまでなら…してもいい、けど…?」 「それ余計にヤベーから…」 苦笑しながら神生の体を解放すると、代わりに手首を取って、リストウォッチを覗き込む。 「っと、急ごーぜ。そろそろ予鈴が鳴る」 「ん」 2人は頷き合うと、同じスピードで駆け出した。 |
花村×主はうっかりするとすぐシリアス方向に行きそうになるんですが。
とにかく軽く! ラブく! と思って書きました。あああぁ、でもラブラブさせ足りない〜o(><;)(;><)o
本当はもっとラブくしたいです。うん。
まぁ、ひそひそ話し合ってたと思ったら、いきなり髪を撫でたりし出す、って端から見たらもう充分アヤシゲなんじゃあとも思うんですけどねー(爆笑)
とりあえず、2人は、みんなの前では苗字で呼び合ってて、2人で居る時だけは名前で呼び合って、いちゃいちゃしてればいい、と思います。
“あん時”っていうのは…18歳未満お断りな状況なんじゃないですかね!
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